2010年08月26日

住宅供給のあり方とは

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昨年度(2009年)行ってきたセミナーの資料を今後少しずつですが、ブログ公開していきたいと思います。
その2です。テキスト部分を以下に転記することに致します。
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住宅供給のあり方とは  平成21年7月19日セミナー資料 悟工房 山中信悟

消費型住宅から社会的資産へ
現在、私たちをとり巻く社会は、大量消費型構造から脱皮しようともがき苦しんでいる。

建築や都市計画の分野でも、環境共生に対する認識が高まり、古民家の再生やエコロジー住宅の建設は、今や時代の要請といえる。

このような社会的状況のなかで、木造住宅建設の分野では、ようやく長寿命住宅への志向が強まってはいるものの、未だ脱消費型社会への明快な指針と手法を備えるには至らずにいる。原因は、生産者の側が、住宅を消費財として、供給してきた従来の考えから抜け出せないでいるからに他ならない。その傾向は、戦後の時代背景に起因する。

敗戦後の日本は、経済復興を目差し、工業化社会へと向かった。そのなかで、都市には人口が集中し、都市部を中心とした住宅の大量供給が性急な課題となった。住宅には、質より量が優先されることになったのである。さらに核家族化がこの傾向に拍車を掛けた。

戦後には社会的資産であった木造住宅も、経済優先、消費主義のデーゼのもと大量消費財とされてしまったのは、まさに戦後高度成長期の不幸と呼ぶほかない。驚くべきことに10年前までは、木造住宅の寿命は26年といわれていたのである。

本来、人格を形成するための家族団欒の場である住宅が消費財とされるのは、文化の向上にとっての大きな阻害要因といえよう。経済と文化はいつの時代にも表裏一体の関係にあるが、かといって文化形成の場を、短命な消費型の箱としてはならない。木造住宅はあくまでも「社会的資産」としてつくられるべきであろう。

「旧公庫仕様」の目差したもの
ところで、この住宅大量供給時期である昭和25年、住宅金融公庫(以下旧公庫)が木造住宅の建設に関する仕様書を発行した。この仕様書は、敗戦の混乱期に横行した不良建築の阻止と、町場の大工や工務店の施工技術を標準化することを目的としていた。

当時を知る職人たちの話しによれば、戦後の一時期、木造住宅の建設現場は資材、人手ともに不足し、とてもじゃないが建物の質を問うような状況にはなかったそうである。旧公庫仕様書が、そのような状況のなかで木造住宅の質をボトムアップするのに一定の成果をもたらした、ということは評価されよう。

戦後60年を経た今日、時代の要求は量の供給から生活の質の向上へと転じた。今や木造住宅の豊かさの指標として、質の向上を目差すことが第一の課題となっている。ただし、かつて公庫が目差した木造住宅の質と、現在求められているそれとはまったく異質のものである。

たとえば最近までの住宅産業界は、省エネ住宅、高気密高断熱住宅、健康住宅などの新機軸を打ち出して顧客を獲得することにしのぎを削っていたが、そこにみられるのは、まるで自動車を購入する際にオプションを取捨選択するのと同様に扱われる「スペック優先」の姿である。その家で長く営まれるであろう「豊かな暮らし」に結び付く指標は見えない。住宅に限らず何事も、社会的問題を技術的に解決してしまおうとする日本的傾向が、矛盾を生んでいる。

このように、住宅をつくる側が、生活者が「真の豊かさ」を実感できるレベルの住宅を提供できないでいる、というのが現状である。むしろ、木造住宅の目差す方向性が「真の豊かさ」を供給するという本質から離れているようにも思われる。かつて公庫が目差した住宅の質もまた、豊かな家庭生活を送るための指標であったはずだが。

長寿命の家が生み出す豊かさ
豊かさを実感するには、まず数世代にわたって安定した生活の場が確保できることが必須条件といえる。つまり、しっかりと生活を支える「長寿命の家」が必要なのである。日常生活の場が不安定では、気持ちに余裕のない日々を送ることになり、健全な生活文化は生まれない。「長寿命の家」に暮らすことで、ゆとりのある生活を送りながら、「真の豊かさ」を手に入れることが出来るだろう。

そこで、「長寿命の家」を実現するためには、まず丈夫な骨組をつくりたい。地震や台風に耐えることはもちろんだが、同時にライフサイクルの変化に対応するフレキシブルな家づくりも目差したい。いわば、生活とともに成長する家である。そのためには、間取りの変更に柔軟に対応できる架構体をつくらなければならない。その実例として、日本各地に残る長寿命の古民家から学ぶ点は多い。

古い民家では、可変部分と不変部分を区分して架構体がつくられた。これは、骨組を上屋と下屋に分けて、不変と可変部分の用途を限定するルールに基づいてつくられており、それにより耐久性とフレキシビリティを高め、100年も200年も人々の生活を支え、朽ちることなく生き延びてきたのである。

古民家を建てた先人たちはまた、木材を大切に扱った。山の木の生長に合わせて家を建て替え、環境に負担をかけない、永続的な資源としての木の使い方を心得ていた。木を大切にするがゆえに、解体後の木材をさらに使い回し、「再生・移築」はごく自然な行為であった。そのような家々が建ち並ぶ町並みは、地域の文化を醸し出す共同体でもあった。

長寿命の家づくりが文化の向上につながり、環境保全につながる、という古民家の理念を、ぜひ継承していきたい。

構造と構法の再評価
住宅のグレードを判断するのに、設備機器や仕上げ素材といった面に目を奪われやすいのは、多くの人々に共通する傾向である。戦後、著しく発展した工業製品の恩恵は少なくない。住宅の性能もまた、住宅設備機器の性能に支配されていると考えてしまうのも無理はない。しかし、真に豊かな生活は果たして設備機器の充実によってもたらされるものだろうか。木造住宅の場合、過剰な設備機器によって骨組、つまり構造・構法がないがしろにされては、本末転倒というべきではないだろうか。

私たちは、「物の豊かさ」が「真の豊かさ」を生まなかったことを、バブル経済の崩壊によって経験している。物があふれたあの時期、人々はむしろ、歪んだ欲望を膨らませただけであった。泡が弾けて後、残るのは虚しさばかりである。

住まいにはまず丈夫な骨組を確保したい。これは前述したような付加的スペックではない、本質的な架構の部分だからである。設備は、その後何世代かのうちにだんだんと充実させていくことが、真に豊かな暮らし方であると考える。「真の豊かさ」を実感するためには、設備ばかり目を奪われず、構造・構法を見直すことから始めなくてはならない。

今こそ過剰な装備を考え直し、「長寿命の家」づくりのために住宅の構造と構法を再評価すべきではないだろうか。

伝統工法と在来工法はどう違うか
構造・構法の再評価と述べたが、現在の木造住宅の構法は非常に多様化している。一般に知られているのは通称であり、構法名とはいえない。そこで、混乱を避けるために、ここで構法の区分を明らかにして話を進めたい。

まず、一般に「プレファブ」と呼ばれるのは、あらかじめ工場でつくった部材を現場で組み立てるという生産プロセスからきた呼称であり、構法的には「木質系パネル工法」などがこれに当たる。

阪神・淡路大震災の直後、一部の報道が「プレファブは残った」と伝えて、人々の不安を煽り、一般工務店や大工職人の反感を招いた。これも構造・構法の名称の混乱から生じた残念な事件であり、多くの人々に在来工法や伝統構法への誤解を植え付けてしまった不幸の始まりである。

「ツーバイフォー」は、基準になる部材の断面が2×4インチ(乾燥基準寸法38×89o)であることから呼ばれる名称で、構法上は「枠組壁工法」である。北米で生まれた外来の工法である。

「在来工法」という名称は、ツーバイフォーのような外来工法に対し、以前から日本に存在していた、というほどの意味で在来と呼ばれている。ただし、いわゆる伝統的な大工技術と同床でありながら発展経緯がことなり、伝統構法との判別が難しい。構法的には、どちらも柱や梁などの軸材で構成される「軸組構法」である。

では「伝統構法」が、本来の日本の構法でありながら、一般的に呼ばれる「在来工法」とどう違うのか。

最大の違いは、後者が明治以降に西欧的な剛の思想を取り入れたトラス構造の工法であり、戦後の復旧に際して日本全国に急速に広まった経緯がある。前者は江戸以前からの大工棟梁の伝承に基づき、粘り強い木の特性を生かした継手・仕口を駆使する、柔の思想をもつ木組みの技術である。伝統構法の「構」を構えると書くのは、工業の「工」に比べると、よりつながりを広くもっていると考えるからである。

伝統構法の見直し
伝統構法による木組みの家がいったいどのような点で優れているのか。以下のような特徴が挙げられている。

1.木材は生物資源として、光合成を繰り返しながら、植えては育つ循環性が高い
2.木材は重量に比べて耐力が強く、加工性に優れた扱いやすい素材である
3.木組みの家は継手・仕口が体系化しており「架構のルール」が確立している
4.部材が規格化され多様な要求に応えられる
5.メンテナンスによって家の寿命を延ばすことができ、移築・再生も可能である
6.立地条件を問わず、周囲の環境に適応できる
7.木や土は、他の素材に比べて経済的である

これからの木造住宅を長寿命たらしめる価値基準は、構造と構法次第であるとさえいえる。旧公庫の基準は、在来工法による木造住宅の質をボトムアップすることに関しては使命を果たしたが、一定以上の質を求める建て主や大工、工務店の要求を満たしているとはいえない。ましてや、これからの木造住宅のあり方を模索する設計者や研究者の要求を満たしているとは言い難い。建物の質に関する、そのような不満は改善不可能ではない、ということを、今後明らかにしていきたい。

住宅供給の構法の変遷
江戸時代以前(伝統構法)
→大工職人等による住宅の建築
 ・特に法律や一定の仕様はない中での建築
  ※世襲による技術の伝達だけで行われてきた

明治時代
→請負制度(契約)の確立(洋風建築)
 ・建築主に対して一定条件下で工事を進めるようになった
  ※伝統的な工法は、そのまま残る

1950年頃
→大量供給時代
 ・持家政策
 ・金融公庫の設立
 ・耐震性向上
 ・建築基準法施行
 ・大工、施工技術の標準化
 ・森林資源の乱伐
 ・新建材の開発
  ※現在の「在来軸組工法」と呼ばれる構法の基礎が出来る。
  ☆在来軸組工法は伝統工法とは違うものであることがここではっきりと分かれている

1965年頃
→住宅の商品化
 ・住宅メーカーの乱立
 ・2×4のオープン化
 ※木造パネル式プレハブ工法が生まれる(その後枠組壁式工法となる)

1980年頃
→住宅の商品戦略活発化
 ・二世帯住宅
 ・バリアフリー住宅
 ・輸入住宅
 ※集成材構法等が生まれる


1995年
→阪神淡路大震災
 ・強さ、安全性への関心
 ・構法の工学的解析
 ※大震災により構造強度面での関心が高まる

2000年頃
→循環型社会における住宅
 ・地球の温暖化
 ・森林の見直し
 ・シックハウス
 ・健康、安全への関心
 ・自然素材の利用
 ※環境面への考慮をした住宅が商品化され始める

2005年
→耐震偽装事件発生
建築基準法の大々的な見直し
 ※見直しの内容はあまりにも偏ったものであり、住宅の商品化を進めてしまう状況が垣間見える。しかし、各団体の強い働きかけにより伝統構法等であっても基準法を満たせるようになりつつある。

2009年
→現在・・・
 ・200年住宅(長期優良住宅)
 ・瑕疵担保法の施行
 ・フラット50の発表
 ※現在の住宅はスペック優先となり自動車を購入するときのようにオプションを取捨選択するようなものとなってしまっていることが多い。

住宅供給の種類
一般的に住宅といわれるものは、幾つかの分け方があるのでまず紹介します

1.規模による分類
 @一戸建て住宅
 A共同住宅(高密度住宅)・・・マンションなど
 B共同住宅(集合住宅)・・・アパート、長屋、テラスハウスなど

2.不動産による目的分類
 @賃貸住宅
 A分譲住宅

他にも各専門分野での分類の仕方はありますが今回は木造住宅の位置づけについて触れるので、上記2点とします

一戸建て住宅について
一戸建て住宅についても一般消費者(建築主、賃借人)に供給される方法は様々です

@注文住宅(設計者による提案等を得て自分で造る)
 ・建築主の所有する土地に対し、生活習慣や家に対する要望を受け全てを提案するもの
 ・まれに、土地探しを含めた依頼を受ける設計者もあります
 ・仕様、間取りの考え方が合う設計者と要望の隅々まで決めていける。
 ・予算に応じた工法の検討等も行える。
 ・監理についても同じ建築士(担当者)が実施していく。
 ・標準仕様というものは原則的になく各建築主に合せた仕様となる。
・工事は別の会社となるので工事契約は別に行う必要がある。

A注文住宅(ハウスメーカー等による提案)【分譲住宅】
 ・原則として土地の仲介から関わることが多く、間取りは自由には出来るが、
基本仕様が決まっていて、全ての要望を反映するには限界があることが多い。
 ・基本仕様以外のものは、全て追加変更として別途費用が必要となる。
  ※坪単価で家の値段が決まっていて総予算の内訳が分かりにくい。
・多くの知識を持っていなくても間取りさえ決めれば建築可能。
 ・予算が単価かされているので買い物感覚で計算できる。
 ・専門的技術が必要な住宅は困難。(伝統工法や標準仕様にないもの)
 ・技術力が各社バラバラで会社選びが困難。
 ・第三者の監理が行われないことが多い。
B建売住宅【分譲住宅】
 ・完成物件で購入する型式。
 ・不動産会社より提供されることがほとんど。
 ・内容を変更することは出来ない。
 ・まさに家を「建てる」ではなくて「買う」感覚で入手する。



C中古住宅(リフォーム)
 ・現存する住宅を改装することになるので構造躯体がしっかりしていれば比較的安価で出来る。
 ・壁位置等の制約があり自由な間取りが取りにくい場合がある。
 ・状況により新築並みに費用が掛かる場合がある。
 ・既存部分の耐用年数は新築に比べて短い。


家と造るとは自分にあった生活空間や環境を得ることを最大の目的とするものとし、
あらゆる面で自分にあっているのかを判断する必要がある。
その中で設計者のかかわりは必要不可欠と考えられる。
しかし、1965年以降住宅を商品化する状況が進み建てるではなく買うといった考え方に偏ってきている。
今一度「家を造る」という事を考え直してみていただきたい。
同時代よりの住宅は公庫仕様を最低限守っていれば良い住宅といった定義が勝手に蔓延し、必要以上に耐久性能を考えないものが増えて、結果として建替えサイクルの早いものとなっている。
本来ならば木造住宅でも手入れをし、生活の変化による可変性に対応しながら使用すれば100年以上は十分に住み続けるようにすることが出来る。

住宅供給は、商品を供給するのではなく、住み手も一緒に家について考え共に造ることが大切である。
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という感じで、文字面だけを見ると、とても難しそうな印象も受けますが、例を挙げながら
意見交換をしていくことで深めていきました。
posted by 小野 at 13:50| Comment(0) | 2009年行ったセミナー資料抜粋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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